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  1. 風土と伝統で造られる日本酒の魅力/白井由紀

風土と伝統で造られる日本酒の魅力/白井由紀

今年は東京オリンピック。海外から来日される多くの方に、日本の文化を伝える絶好の機会でもあります。その中の一つ、「日本酒の魅力」を取り上げていきます。

 

10年の間に日本酒の需要が大きく変化

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2013年、無形文化遺産に登録された和食は海外でブームとなり、日本酒も人気が出てきました。
日本酒の輸出総額は222億円(2018年度)で、9年連続で最高額を記録。10年前と比べると倍の額となっています。更に、酒類業はクールジャパンとしてヨーロッパに日本酒を新たな価値を創出しており、日本酒は「SAKE」として国際的に注目度が高まっています。

 

日本酒は何からできている?

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日本酒のもととなるのは「米」「水」「麹菌・酵母」の3つです。

 

言わずと知れたことですが、日本酒の原料は米。

ただし、普段私たちが食べる米とは別です。「コシヒカリ」「ササニシキ」といった飯米用の米ではなく、「山田錦」「五百万石」といった酒造好適米と呼ばれる日本酒を造るのに適した米を使用しています。これらは、米粒が大きい、たんぱく質の含有量が少ない、水を吸いやすく糖化性がいい、という特徴があります。
 
また、飯米用の米は、玄米から10%ほど精米していますが、日本酒用の米は30~50%程精米します。これは、外側のたんぱく質や脂肪、灰分などを取り除き、中心部分のデンプンをより多く使うために磨かれているのです。この工程を知るだけでも、日本酒の繊細さをうかがえることでしょう。
 
 

日本酒の原料が米となると、「米どころ=おいしい日本酒ができるところ」と考えがちですが、必ずしもそうではありません。実は、水こそが日本酒において重要な原料と言えます。

日本酒の成分の約8割は水からできています。味、におい、濁りがないことは絶対条件ですが、麹菌や酵母菌の発育に必要なミネラル分が適度に含まれており、酒質劣化の原因となる鉄分やマンガン、有機物が少ないことも大切な条件となります。

米は作ったものを運べますが、水は、その土地そのものとなるので「質の良い水が出る場所=質の良い日本酒造りの場所」となるのです。
 
 

麹菌・酵母

米のデンプン質を糖化する麹菌と、糖をアルコールと炭酸ガスに変える酵母。風味や味を左右するこの二つは、日本酒の要となります。
 
 

日本酒の工程は世界でも特殊

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これらの原料で日本酒は造られますが、日本酒は並行複発酵という大変特殊な工程で作られます。違いは麹を使うことです。麹で米のでんぷんを糖化させ、それを酵母の力でアルコール発酵させる工程となります。
他の酒類の工程と比べてみましょう。
 
・ワイン「単発酵」
 ぶどう(原料)→酵母による発酵→完成
 
・ビール「単行複発酵」
 麦芽(原料)→酵素による糖化→酵母による発酵→完成
 
・日本酒「並行複発酵」
 米(原料)→麹菌による糖化→酵母による発酵→完成
 
こんな複雑な造り方をするお酒は、世界中を探しても日本酒だけだといえます。日本酒は、とても繊細な工程で造られているのです。

 
工程を知ると日本酒は風土と伝統が育てあげた日本の文化そのものというのが、おわかりでしょう。日本酒の魅力が高まってきましたか?次回は日本酒の種類について解説していきます。


担当管理栄養士:白井由紀
 
 
参考文献
  • 「酒のしおり(平成31年3月)」国税庁
  • 酒みづき」,沢の鶴, (2020.1.6閲覧)
  • 島田律子「日本酒美人」ぴあ株式会社(2004)

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