妊娠糖尿病を経験した管理栄養士が伝授!妊娠糖尿病との向き合い方/矢村千紘
こんにちは。2回の妊娠糖尿病を経験した、管理栄養士の矢村千紘です。
2020年3月 4日
妊娠糖尿病になる人はどのくらいいるのか?
決して多いわけではないですが、血糖値が高めですね、と言われて精密検査を受けた方もいるのではないでしょうか。
「詳しい検査をしましょう」と言われた時点でとても不安な気持ちになりますよね。私もその一人です。
ただ、お腹の赤ちゃんは待ったなしに、毎日お母さんの食べたもので育まれていきます。
ぜひ妊娠糖尿病についてしっかりとした知識を持って、安心して出産を迎え、また出産後の生活についても家族を含め同じ認識で食生活に取り組んでもらえたらと思います。
妊娠糖尿病と糖尿病の違い
妊娠糖尿病とは『妊娠中にはじめて発見または発症された糖尿病にいたっていない糖代謝異常』と定義されます。妊娠前から糖尿病と診断されていたり、妊娠中に明らかに糖尿病の基準を超えるものは除きます。
出産後は正常に戻ることが多いのですが、将来の糖尿病のリスクは上がるため、私も定期的に検査に行っています。
診断基準は?
75g糖負荷試験と言われる、甘い炭酸水を飲んで血糖値を測る検査において、次の1点以上を満たした場合に診断されます。
- 空腹時血糖値 ≧92mg/dL
- 1時間値 ≧180mg/dL
- 2時間値 ≧153mg/dL
私の場合は、第1子で1点陽性、第2子では2点陽性にて妊娠糖尿病と診断されています。
妊娠糖尿病だとどうなるのか
血糖値が高い状態が続くと、胎児が大きくなりすぎる、新生児期に低血糖、呼吸障害といった合併症のリスクが高くなると言われています。
また、お母さん自身にも早産、妊娠高血圧症候群、尿路感染症などが起きやすくなります。
特に赤ちゃんが大きくなると(4000g以上の巨大児)、お産が困難になることも多く、しっかりと血糖値をコントロールしていくことは、安心安全なお産のためにとても重要なことです。
妊娠糖尿病の食事
- お母さん(母体)と胎児がともに健全に妊娠を維持するのに必要なエネルギーを供給し、
- 食後の高血糖を起こさず、
- かつ、空腹時のケトン体産生を亢進させない
という3条件を満たすとあります。
難しいことはありません!
一般の妊婦さん同様、適切な体重増加で、かつ血糖値を上げすぎないようにすること。
つまり
- バランス良く食べる
- 食事を朝、昼、夜で3等分にする
- 食事と食事の間隔を一定にし生活リズムを整える
いたってシンプルです。
ただし、妊娠が進むにつれて、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の効きが悪くなるため、より血糖値が上昇しやすくなります。そのため、食事の回数を分けて血糖値を安定させる分割食(1日5回〜6回)や、それでもコントロールが難しい場合はインスリン注射をすることもあります。
私は、第1子は妊娠後期から分割食(5回食)、第2子は妊娠中期から分割食で妊娠後期からはインスリン注射を開始しました。
食生活を見直す機会に
『健康的な食生活』は、特別なことをする必要はありません。無意識にできるくらい習慣にするまでは「大変だな」と思うかもしれませんが、今後の生活のためにぜひ妊娠時期を有効に活用していただきたいと思います。
なぜなら、妊娠糖尿病の既往がある場合、妊娠糖尿病でなかった人に比べて糖尿病になる確率は約7倍となります。2型糖尿病の発症は、生活環境も大きく影響します。
むやみに怖がる必要はありませんが、妊娠時に整えた食生活を出産後も継続させることは、自分の将来の病気のリスクを下げるだけでなく、子供にとっても適切な食習慣を身に付ける『食育』の観点からも、重要です。
「太っている人がなるもの」というイメージが強い糖尿病ですが、私のBMI(体格指数)は標準以下でした。そういった体質だけでなく、『健康』の定義は人それぞれです。価値観や、その時の状況によっても変わってくるでしょう。
自分に合った食生活を専門家と一緒に見つけませんか?
担当管理栄養士:矢村千紘
担当管理栄養士:矢村千紘
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド」文光堂(2016)
- 日本糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A」(2020.2.25閲覧)