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  1. テイクアウト店をコンサルする管理栄養士が教える食中毒予防の基本の「き」/若林由香里

テイクアウト店をコンサルする管理栄養士が教える食中毒予防の基本の「き」/若林由香里

やっと全面解除になりましたが、コロナの影響で自粛要請が出され、テイクアウト事業を始めたお店が増えてきましたね。お得なサービスも多く、毎日の食事作りに疲弊したご家庭では、大変重宝されたのではないでしょうか。ただ、残念なことに食中毒が出てしまったお店もあったようです。減ってしまった売り上げを補填するためにテイクアウトを始めたのに、お店を休業しなくてはならない状況になってしまっては本末転倒です。

 
これからの時期は、湿度や気温が高い日が続き、食中毒菌にとっては、大好きな季節がやってきます。
店内で提供し、すぐ召し上がっていただくのとは違い、テイクアウトはお客様がどんな状態で保管し、いつ食べるかわかりません。購入していただいた商品で食中毒を起こさないために、今一度、衛生管理について見直してみませんか?

 

食中毒の原因

コラム画像①.jpg
食中毒とは、飲食物を介して摂取された病原体やその毒素などにより、比較的急性に起こる胃腸炎症状などの健康被害の総称です。食中毒を引き起こす原因となるものにはおもに「細菌」と「ウイルス」があります。

 

細菌性食中毒

細菌は、温度や湿度など増殖に適した条件が揃うと、調理されたものの中で増えて食中毒を引き起こします。細菌性食中毒は、湿度や気温が高くなる梅雨時期から多く発生し始めます。

 

ウイルス性食中毒

ウイルスは調理されたものの中で増殖はしませんが、食べ物を介して体内に入ると、腸管内で増殖し食中毒を引き起こします。ウイルス性食中毒は、低温や乾燥の中で長く生存するので、冬場に多く発生します。代表的なノロウイルスは、加熱が不十分な二枚貝や感染している調理者を介した食品から感染を起こします。

 

食中毒のおもな細菌・ウイルス

下記に、いくつか例を紹介します。

細菌・ウイルス
症状
特徴など
腸管出血性大腸菌(O157等) 激しい腹痛、下痢、血の混じった下痢など 糞便に汚染され、十分に加熱されていない肉、良く洗っていない野菜、井戸水など
サルモネラ菌 吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛など 生卵、卵料理、牛肉のたたきなど
カンピロバクター 下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛など 十分に火が通っていない鶏肉、生乳、良く洗っていない野菜など
腸炎ビブリオ菌 激しい下痢、腹痛など 刺身、お寿司など魚介類の生食
黄色ブドウ球菌 吐き気、腹痛など 人の皮膚に常在、手指の化膿で食品にうつる、おにぎり、お弁当、調理パンなど
ウェルシュ菌 下痢、腹痛など カレーやシチューなどの煮込み料理
ノロウイルス
嘔吐、下痢、腹痛など
牡蠣などの二枚貝、感染者を介した料理


 

食中毒予防3原則

コラム画像②.jpg

食中毒の予防のためには、原因となる細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」ウイルスを「持ち込まない」「広げない」「つけない」「やっつける」が原則になります。


私たち管理栄養士は、大量に食事を提供する病院や社員食堂、老人保健施設、学校給食などで仕事をしています。その際、栄養を考えた献立作成も行いますが、衛生面を考慮した調理基準である「大量調理施設衛生管理マニュアル」に則り、業務を行っています。下記に食中毒予防のために調理従事者ならびに商品のやりとりをする店員が守るべき重要事項をまとめました。
 

●つけない

・手洗いを徹底し、調理器具の洗浄や消毒、食材ごとに使い分けをしましょう。
・調理従事者の体調管理を徹底し、下痢、嘔吐、発熱などの症状がある場合は従事させないようにしましょう。
 
 

●増やさない

・食中毒菌が繁殖しやすいため、常温で放置はせず10℃以下または65℃以上で管理しましょう。
・調理後、速やかに放冷し、菌の繁殖の原因になる水気はよくきりましょう。
 
 

●やっつける

・加熱食品は中心部までしっかり火を通す。75℃以上1分以上加熱しましょう。
・生卵、刺身などの生ものの提供は避け、テイクアウトに適したメニューにしましょう。
・使用した布巾、まな板、包丁などは洗浄し、熱湯や台所用殺菌剤で殺菌しましょう。

 

●持ち込まない

・まずは調理従事者が感染しない、感染した時は調理現場に立ち入らないようにしましょう。
 
 

●広げない

・ウイルスが持ち込まれても食品につかなければ食中毒は起きません。こまめな手洗い、調理器具や布巾の洗浄、消毒張って徹底しましょう。
 


2020年6月に食品衛生法改正が施行されました。原則すべての事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められます。
 
食中毒予防のための衛生管理だけでなく、温かいものと冷たいものを一緒にしないメニュー構成、調理や盛り付け時のマスクやビニール手袋の着用、髪の毛、輪ゴム、クリップ、ホッチキスの芯、ラップやビニールの切れ端などの異物混入の防止などにも努めましょう。
 
美味しい料理を安心、安全に食べていただくために、早めに食べてくださいとの声掛けや消費期限を明記することをお勧めします。いざという時のために、損害賠償責任保険の加入も検討しましょう。
 
 
担当管理栄養士:若林由香里


参考文献
 

若林由香里執筆コラム

授乳・離乳の支援ガイドが改定されました
授乳・離乳の支援ガイド ~授乳編~
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元お受験ママ管理栄養士が教える「免疫力」を高める食事
知れば怖くない!食物アレルギーについての基礎知識①
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2020年6月24日

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