薬膳のプロが選ぶ!真夏の夜の快眠食材/相川朋世
日本の夏は湿気も強く、暑さと湿気と両方のケアをしないと、夏バテになってしまいます。家やオフィスでは、冷房のかかった部屋で快適に過ごせますが、夜になって“眠りたいのに眠れない”というような悩みを持っている方、多いのではないでしょうか?暑さのせいと考えがちですが、中医学的にみると原因はそれだけではないのです。
私達の身体の基本的な構成成分ともいわれる「気・血・水」全てが、この暑さによって消耗されています。
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2020年7月29日
今回は、夏に起こりやすい不眠について、薬膳のベースである中医学の視点から予防・改善法をお伝えします。
夏は1年で1番消耗する季節
中医学では“陰陽バランスが崩れるから不調が出たり、病気になる”といわれており、朝日が昇れば起床し、日が沈めば眠くなってくるのが本来の姿です。その陰陽のバランスを保っている要素が「気・血・津」の3つで、それをコントロールしているのが「五臓」といわれているものです。
中医学で身体を構成する要素「気・血・水」
私たちの元気の源であり、身体や内臓を働かせているのは「気」ですが、汗をかくと「気」は一緒に流れていってしまいます。そして、この汗は身体を潤す「水」なので、「水」も減っていきます。さらに、私たちの身体に酸素や栄養素を送り届ける「血」は、「気」がないと作り出すことができません。
私達の身体の基本的な構成成分ともいわれる「気・血・水」全てが、この暑さによって消耗されています。
身体の働きをコントロールする五臓
「五臓」は肝心脾肺腎の5つのことをいいますが、特に夏の不眠には「心」が関わっています。
「心」は主に血液を送り出すポンプとして働くほか、精神的なコントロールをしています。現代でも感情は心にあると考えられるように、ドキドキする、ソワソワして落ち着かないなどは、心が安定していないことに繋がります。夏は特に、この「心」の働きが活発になる半面、弱くなりやすいので、ケアをする必要があります。
夏は熱を冷まし、血を補う食養生が基本
身体の熱を冷ます「寒涼性」の食材
トマト・ナス・キュウリ・ゴーヤ・なす・緑豆もやし・セロリ・レタス・スイカ・バナナ・キウイフルーツ・メロン・昆布・ひじき・緑茶・ミント
夏野菜や果物は身体を冷やす食材が多く、汗で大量に失う水分をたっぷり含んでいます。冷やして食べるのも美味しいですが、消化吸収を担う「脾」は冷たいものを嫌います。常温でも甘みは強く、おいしく食べることができるので、冷やしすぎには気を付けましょう。
「血」を補う食材
きくらげ・なつめ・にんじん・ほうれん草・あさり・イカ・鮭・ひじき・牛肉・黒ゴマ・黒米・プルーン・クルミ・アーモンド
黒い食材や色の濃い野菜、赤身の肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。間食になつめやプレーンなどのドライフルーツ、ナッツ類を食べることがおすすめです。
「心」のケアをする食材
中医学では「臓を以て臓を補う」という考え方があるので、心臓=ハツでケアすることができます。また、貝類は「心」をケアして落ち着かせるほか、「血」も補い、身体を冷やす働きも持っているので、眠れない夜には欠かせない食材です。
夏の養生を怠ると、秋や冬の涼しくなったころに体調を崩しやすくなるといわれています。クーラーや冷たい飲料水、アイスなどで涼しくするのも、たまにはいいですが、食事で身体を優しくクールダウン、眠りやすい身体を作っていきましょう。
担当管理栄養士:相川朋世
担当管理栄養士:相川朋世
参考文献
- 日本中医食養学会「現代の食卓に生かす「食物性味表」改定2版」(株)平河工業社(2014)
- 伊藤隆、他「ココロとカラダの不調を改善する やさしい東洋医学」株式会社ナツメ社(2016)
- 池田陽子「ゆる薬膳。365日」JTBパブリッシング(2020)
相川朋世執筆コラム
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