これからの時代の健康づくり~人との「つながり」が健康を左右する~/河村桃子
2011年を表す漢字は「絆」と、東日本大震災を通して私たちは人との絆の大切さを改めて痛感しました。日本にはお裾分けやご近所さんの助け合いといった文化がありますが、残念なことに近年では都市部を中心に地域のつながりが薄れてきています。
そんな中、実は最近、「人とのつながりが健康に影響する」ということが注目されています。
そんな中、実は最近、「人とのつながりが健康に影響する」ということが注目されています。
「良好な人間関係」が人を健康にする
ハーバード大学で1938年にはじまり現在も続いている成人発達研究から、幸せな人生を送るためのヒントが見出されました。
ハーバード大学2年生の男子学生と、ボストンの極貧環境で育った少年達といった生活環境が違う2つのグループ計724人の男性を長期に渡って追跡調査したところ、「私たちを健康に幸福にするのは良い人間関係に尽きる」ということがわかりました。
また、良い人間関係とは友人の数やパートナーの有無ではなく、身近な人たちとの関係の質が重要であると結論づけています。
また、良い人間関係とは友人の数やパートナーの有無ではなく、身近な人たちとの関係の質が重要であると結論づけています。
孤独は命取りであり、家族や友人、コミュニティなど周りとのつながりがある人ほど健康な人生を送ることができるのです。
人とのつながり「ソーシャル・キャピタル」が健康に影響する
従来の健康管理は食事、運動、睡眠と個人で取り組むことが大事であるとされてきました。しかし、最近では個人の取り組みにプラスして「ソーシャル・キャピタル」という概念も健康に影響を与えることがわかってきました。
ソーシャル・キャピタルとは日本語で「社会的資本」と訳され、社会・地域における人々の信頼関係や結びつきの力、いわゆる「絆」のことです。
例えば、お互いに信頼し合っている人たちが住んでいる地域はソーシャル・キャピタルが高く、近隣との関係が疎遠な地域はソーシャル・キャピタルが低いということです。
例えば、お互いに信頼し合っている人たちが住んでいる地域はソーシャル・キャピタルが高く、近隣との関係が疎遠な地域はソーシャル・キャピタルが低いということです。
ハーバード大学が行ったアメリカの州ごとの調査では、ソーシャル・キャピタルが高い州は死亡率が低く、ソーシャル・キャピタルが低い州は死亡率が高いという結果が出ています。また、日本の高齢者を対象とした4年間の追跡調査ではソーシャル・キャピタルが低い地域に住む女性は、高い地域に住む女性と比べて要介護状態になるリスクが1.68倍も高いという調査結果が出ています。
なぜソーシャル・キャピタルが健康に影響を与えるのか?
●ストレスが少ない
信頼関係が低いと心理的なストレスが大きく、ストレスが病気を引き起こします。ソーシャル・キャピタルが高いとストレスが軽減され、ストレス由来で起こる病気を防ぐことができます。
●社会的コントロールが強くなる
ソーシャル・キャピタルが高いと規範が守られやすくなります。例えば、喫煙者の少ない地域では周りの目があることで喫煙しにくい状況が作られるなど、一般的に良くないとされる行動を抑制する力が強くなります。
●情報が伝わりやすく影響力が高まる
健康のために禁煙をした、ジムに通い始めたなどといった健康に影響を与える情報は、つながりが強いほど伝わりやすく、情報に触れた人の行動を変える力が高い傾向にあります。
●政治や政策に影響を与える
つながりが強いことで集団行動が起こりやすくなります。例えば、ソーシャル・キャピタルの高い地域では市民活動が活発になり、健康の維持向上に結びつくような地域の政治や政策に影響を与えます。
日本が長寿国であるのは健康的な日本食の力とともに、困った時はお互い様といった日本人独特の絆の精神も関係しているのかもしれませんね。しかし、コロナ禍で地域や友人関係、職場でのコミュニケーションなど、人とつながりを作りにくい状況が続いています。
リアルでのコミュニケーションが難しい場合は、インターネットやSNSを活用して人とのつながりを持つのもひとつです。
現在、当協会の代表理事が主宰する「食の相談窓口 San-CuBic」でも「もっとパーソナル管理栄養士を身近に感じ、食や栄養に迷ったときにコンタクトがとれるコミュニティーづくり」の一環として、Facebook内の非公開グループ「CLUB MADOKA」を2021年8月~9月の期間限定で開催し、皆様からあげていただいた健康や食の悩みをテーマに月2回のLive配信を行っています(※現在は無料)。
健康づくりのために管理栄養士とつながりたいという方は、お気軽にお声がけください。
担当管理栄養士:河村桃子
現在、当協会の代表理事が主宰する「食の相談窓口 San-CuBic」でも「もっとパーソナル管理栄養士を身近に感じ、食や栄養に迷ったときにコンタクトがとれるコミュニティーづくり」の一環として、Facebook内の非公開グループ「CLUB MADOKA」を2021年8月~9月の期間限定で開催し、皆様からあげていただいた健康や食の悩みをテーマに月2回のLive配信を行っています(※現在は無料)。
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担当管理栄養士:河村桃子
参考文献
- 村山 洋史「「つながり」と健康格差 なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのか」ポプラ新書(2018)
- 人とのつながりが健康をつくる,ヘルスリテラシー 健康を決める力,(閲覧日:2021年8月14日)
- ロバート・ウォールディンガー「人生を幸せにするのは何?最も長期に渡る幸福の研究から」,TED,(閲覧日:2021年8月14日)
- 資料7 ソーシャル・キャピタル,厚生労働省,(閲覧日:2021年8月14日)
- ソーシャルキャピタルが弱い地域に住む女性は,要介護状態になる危険性が1.68倍高い,日本福祉大学 健康社会研究センター, (閲覧日:2021年8月14日)
- 相田潤,近藤克則(著)「ソーシャル・キャピタルと健康格差」,J-STAGE,(閲覧日:2021年8月14日)
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