糖尿病予防にも睡眠が有効!糖尿病療養指導士が伝授する食事と運動の心得/矢村千紘
こんにちは。糖尿病療養指導士12年目の管理栄養士、矢村千紘です。
私が糖尿病療養指導に携わる現場において、睡眠や休養によって血糖値が改善したり、生活習慣の改善がスムーズにいったりするケースに多く出会います。今回は休養の中でも最も大切な睡眠について、糖尿病予防、血糖値コントロール改善の観点からお伝えします。
1日の約1/3を占める睡眠は、ただ脳と体に休息を与えるだけではなく、他にも、「記憶」を整理して定着させる、「ホルモンバランス」を調整する、「免疫力」を上げて病気を遠ざける、「脳の老廃物」をとる、といった役割があります。
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2022年6月29日
日本人は世界的にみても睡眠時間がとても短いこと、そして睡眠以外の休養方法に意識が向いていないことが指摘されています。
毎日元気で過ごし、パフォーマンス高い状態でいることは、自分自身の将来の健康だけでなく、会社にとっても家族にとっても大切なことではないでしょうか。
私が糖尿病療養指導に携わる現場において、睡眠や休養によって血糖値が改善したり、生活習慣の改善がスムーズにいったりするケースに多く出会います。今回は休養の中でも最も大切な睡眠について、糖尿病予防、血糖値コントロール改善の観点からお伝えします。
睡眠不足は糖尿病のリスクを上げる
1日の約1/3を占める睡眠は、ただ脳と体に休息を与えるだけではなく、他にも、「記憶」を整理して定着させる、「ホルモンバランス」を調整する、「免疫力」を上げて病気を遠ざける、「脳の老廃物」をとる、といった役割があります。
中でも、「ホルモンバランス」を調整する点が、血糖値への影響といった点で重要です。
睡眠不足がたった2日間続いただけで、食欲を抑えるホルモンであるレプチンが減少し、食欲を高めるホルモンであるグレリンが増えます。つまり、無意識に食欲は増し、食べてもなかなか満腹感が得られず、食べ過ぎてしまうのです。
また、睡眠不足は日中の活動量が低下することも分かっていますが、「疲れが取れないまま朝が来て、日中だるい」という経験は誰しもがあるのではないでしょうか。その結果、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、内臓脂肪の増加、肥満につながります。内臓脂肪が増えると、インスリンの効きを妨げ、血糖値が下がりにくくなるだけでなく、睡眠不足が続くと、特に糖質を過剰に摂取する傾向があるため短期的にも血糖値の上昇にも影響していきます。
また、睡眠不足は日中の活動量が低下することも分かっていますが、「疲れが取れないまま朝が来て、日中だるい」という経験は誰しもがあるのではないでしょうか。その結果、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、内臓脂肪の増加、肥満につながります。内臓脂肪が増えると、インスリンの効きを妨げ、血糖値が下がりにくくなるだけでなく、睡眠不足が続くと、特に糖質を過剰に摂取する傾向があるため短期的にも血糖値の上昇にも影響していきます。
実際に、睡眠時間が7時間以上7.5時間未満の人に比べて、6.5時間未満の人で約1.3倍に、5.5時間未満の人で約1.5倍に糖尿病のリスクが上がると言われています。
睡眠の改善で糖尿病を予防する!食事と運動の心得
●規則正しい生活リズムは食事で作る!
規則正しい生活は、ホルモンの分泌や自律神経を調整し、睡眠の準備を整えます。その生活のリズムを作るのに、1日3回ある食事はとても有効です。
朝食は、体内時計のリセットと睡眠を促すホルモンを作るのに必要です。理想は、主食(糖質)と、主菜(たんぱく質源)と、野菜料理を揃える事ですが、まずは卵かけご飯とお味噌汁でも構いません。朝に摂ったたんぱく質は、時間をかけて「メラトニン」というホルモンに変換され睡眠を促してくれます。
夕食は、夜遅い時間にとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられてしまいます。そのため、寝る2〜3時間前に済ますことを目安にしましょう。
また、昼食の欠食は夕食の過食につながるため内臓に負担がかかり、消化吸収に時間がかかるだけでなく、活動量の少ない夜は血糖値の上昇にもつながります。
「朝食を食べる習慣をつけ、昼食は欠食せず、夕食は寝る2〜3時間前までに」という規則正しい時間での食事を心がけてみてください。
●最適な運動時間とタイミング
適度な運動は、筋肉でのブドウ糖の消費を促し、インスリン感受性を高めることで、血糖値を改善する効果が期待できます。そして、中性脂肪を低下させ、HDL(善玉)コレステロールを増やし、糖尿病以外の生活習慣病リスクの低下にも良い効果がありますが、睡眠の質を高めることにも有効です。日中によく動くと夜によく眠れるというのは皆さんも経験があるかと思います。
睡眠の点からは、1回の運動時間が30~60分で、就寝の2時間前までに終わらせていると、入眠の促進や睡眠時間の延長が期待できます。糖尿病の運動指導でも、1日30分のウォーキングを目標に設定することが多いので、血糖コントロールと睡眠の質の向上のためにも、再度、適度な運動を心がけてみましょう。
今回は、睡眠の点から血糖値への影響についてお伝えしましたが、とはいえ忙しくて睡眠確保が難しかったり、睡眠の質を上げる準備ができなかったりすることもあると思います。休養方法は、睡眠だけではありません。
ご自身の生活スタイルに合った休養スタイルをパーソナル管理栄養士とともに見つけていきませんか。
ご自身の生活スタイルに合った休養スタイルをパーソナル管理栄養士とともに見つけていきませんか。
参考文献
- 村田正明・片野秀樹「休養学基礎」MCメディカ出版(2021.7.1)
- 日本糖尿病療養指導士認定機構「糖尿病療養指導ガイドブック2021」メディカルレビュー社(2021.5.20)
- メタボや肥満の人が「睡眠不足」を感じたら放置してはいけない理由,保健指導リソースガイド, (2022.6.18閲覧)
- 良い睡眠は糖尿病のコントロールを良くするために必要 睡眠を改善するための5つの方法,糖尿病ネットワーク,(2022.6.18閲覧)
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