薬膳のプロが教える!花粉症を改善するための食養生/相川朋世
立春が過ぎ、暦の上では春になります。肌寒い日が続きますが、徐々に気温は上がり、風が吹き、あっという間に桜が咲き、さまざまな植物が芽吹き始めます。何か新しいことを始めたいワクワク感と共に、やってくる不安感…。花粉症の方は“今年も来たか”と腹をくくる時期でもあります。
穀類の中できびには『補肺』といって『肺』の機能を高める効果を持つため、白米にきびを混ぜて食べるのがオススメです。穀類には『補気』といって『気』を補う作用があるため、お米を中心とした食事を心がけることで、『気』を充実させることができ、消化もしやすいため、消化吸収を担う『脾』のケアもしてくれます。
山芋は乾燥させて『山薬』という生薬として用いられ、滋養強壮の効果が期待されています。『脾』『肺』『腎』の機能を高めて、消化吸収を促す作用のほか、身体を潤して空咳や皮膚の乾燥、コロコロした便の改善、老化防止など、美容や生活習慣病の予防にもオススメの食材です。
『肺』をケアしたり、潤す食材は白い食材に多くあります。大豆製品は消化が良く『脾』への負担が少なく、『肺』を潤す効果もあり、乾燥大豆、煮豆、豆腐、納豆、豆乳、湯葉など、いろんな食べ方があります。1日1大豆食品を取り入れてみましょう。
中医学では『呼吸』をとても大切なものだと考えます。
私たちは飲食物、そして呼吸で得た空気を材料に身体のエネルギー源である『気』を作り出しています。朝起きた時や休憩中や夜寝る前など、深呼吸する時間を作りましょう。深呼吸は気持ちを落ち着けたり、緊張や不安を和らげたり、気の巡りを整えてくれます。ゆっくり息を吐き胸を張って大きく息を吸いこみましょう。また、正しい姿勢でいることは呼吸をするためにも大切なことです。正しい姿勢をとることで体の奥までしっかりと気を送り込むことができます。
●薬膳のプロが教える!生理痛を楽にするタイプ別薬膳ブレンド茶
●薬膳のプロが教える!むくみの改善を食事でサポート
●薬膳のプロが教える!心がザワついた時に食べたい薬膳食材3選
●薬膳のプロが教える!怒りを鎮めたい時に食べたい薬膳食材3選
2023年3月 3日
花粉症の予防は、花粉が飛び散る前に始めないといけないため、寒い冬からの養生が大切となりますが、花粉症予防の養生は、アレルギーだけでなく、自分自身の免疫力アップにつながるため、いつ始めても遅くありません。
今回のコラムでは、自分自身の免疫力『衛気』を高める食養生についてお伝えします。
花粉症になる原因『衛気虚』とは?
中医学では『正気存内、邪不可干(せいきぞんない、じゃふかかん)』という言葉があり、『正気』が体内にしっかりあれば、『邪気』が干渉することができない、という意味です。『正気』とは邪気に対する抵抗力や環境に適応する、人が生まれながらに持っている力のことを言います。
人が持つ『気』の中でも、身体を守っているバリアの働きを持つものを『衛気(えき)』と言います。身体中を覆い、以下のような働きを持っています。
- 体表を守り、邪気の侵入を防ぐ
- 汗のコントロールをして、体温を調整する
- 皮膚や臓器を温める
などの働きがあります。
●自分の衛気をチェックしよう!
□風邪をひきやすい
□季節の変わり目に体調を崩しやすい
□暑くないのに汗が出る
□冷え性で冷房が苦手
□花粉症などアレルギーがある
多く当てはまるほど、衛気が不足している可能性があります。
国際中医薬膳師が推奨する!『衛気』を高める薬膳食材3選
『脾』の働きは、私たちの食べたものを消化吸収する器官で、『衛気』の素を作り、『肺』の働きは、呼吸だけでなく、全身に『気』を巡らすことと言われています。
『脾』で作られた『気』は、呼吸で得た『天空の気』とあわせて『衛気』を作り出すため、『脾』と『肺』のケアをする食材が、『衛気』を高めてくれると言えます。
今回もスーパーで手に入る3つの薬膳食材を紹介します。
●きび
穀類の中できびには『補肺』といって『肺』の機能を高める効果を持つため、白米にきびを混ぜて食べるのがオススメです。穀類には『補気』といって『気』を補う作用があるため、お米を中心とした食事を心がけることで、『気』を充実させることができ、消化もしやすいため、消化吸収を担う『脾』のケアもしてくれます。
栄養学的にみると代謝に欠かせないマグネシウムなどのミネラルを多く含んでいるので、いつもの白米にきびを混ぜることで、普段不足しがちな栄養素を取り入れることができ、代謝アップが期待できます。
●山芋
山芋は乾燥させて『山薬』という生薬として用いられ、滋養強壮の効果が期待されています。『脾』『肺』『腎』の機能を高めて、消化吸収を促す作用のほか、身体を潤して空咳や皮膚の乾燥、コロコロした便の改善、老化防止など、美容や生活習慣病の予防にもオススメの食材です。
栄養学的には食物繊維やレジスタントスターチを多く含み、食事による血糖値の上昇を緩めたり、胃の粘膜を保護、胃腸の働きを活発にする効果があります。生で食べるとヌルヌル×シャキシャキ、焼いて食べればほホッコリ×サックリと食感が楽しめます。
●大豆製品(豆腐、豆乳、納豆等)
『肺』をケアしたり、潤す食材は白い食材に多くあります。大豆製品は消化が良く『脾』への負担が少なく、『肺』を潤す効果もあり、乾燥大豆、煮豆、豆腐、納豆、豆乳、湯葉など、いろんな食べ方があります。1日1大豆食品を取り入れてみましょう。
栄養学的にも消化吸収がしやすく、身体に優しい食材です。納豆は血行不良に良く、冷えや肩こりなどの改善にいいですね。お豆腐は生で食べると身体が冷えやすいので、温めたり、生姜やネギなどの薬味と一緒に食べるようにしましょう。
この他に『脾』『肺』をケアする食材を紹介します。
- 『脾』をケアする食材…自然の甘みがある食材 (穀類、芋類、豆類、きのこ類等)
- 『肺』をケアする食材…白色の食材 (豆腐、大根、蕪、れんこん、山芋、白キクラゲ等)
衛気を養う暮らしのポイント
中医学では『呼吸』をとても大切なものだと考えます。
私たちは飲食物、そして呼吸で得た空気を材料に身体のエネルギー源である『気』を作り出しています。朝起きた時や休憩中や夜寝る前など、深呼吸する時間を作りましょう。深呼吸は気持ちを落ち着けたり、緊張や不安を和らげたり、気の巡りを整えてくれます。ゆっくり息を吐き胸を張って大きく息を吸いこみましょう。また、正しい姿勢でいることは呼吸をするためにも大切なことです。正しい姿勢をとることで体の奥までしっかりと気を送り込むことができます。
毎日の食事と呼吸、姿勢を意識して、『衛気』を高めていきましょう。『衛気』を高めることは、自身の免疫力アップにもつながり、心と身体の土台を作ることができます。今からでも、今年の冬からでもいつ始めても構いません。いつもの食事にプラスするだけで、暮らしが楽になるかもしれませんよ。
参考文献
- 梁晨千鶴「東方栄養新書」メディカルユニコーン(2014)
- 鳥海明子「女性力を高める薬膳ごはん」マイナビ(2013)
- 植木もも子「薬膳・漢方 食材&食べ合わせ手帖」西東社(2012)
●薬膳のプロが教える!むくみの改善を食事でサポート
●薬膳のプロが教える!心がザワついた時に食べたい薬膳食材3選
●薬膳のプロが教える!怒りを鎮めたい時に食べたい薬膳食材3選